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夏の一夜だけ、妖怪たちがよみせ通りを埋め尽くす!?「妖店通り商店街」

公開日: 2018/08/30

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妖怪は境目から現れると言います。
いにしえより、橋やトンネルと言った「物と物を繋げる境界線」が妖怪伝説の舞台となってきました。

よみせ通りとは、文京区千駄木と台東区谷中の区界にある商店街。大正ごろ、夜になると露天や大道芸人で賑わっていたことから、この名が付けられました。

こちらのよみせ通りにて、7月29日(日)に平成最後の「妖店通り商店街」が開催され、人間と妖怪たちが親睦を深めました。
よみせ通り商栄会青年部と妖店百貨展による年に1回の夏祭りイベントで、テーマは「仮装をして遊ぶ」ではなく「普段、人間に紛れて過ごしている妖怪たちが、元の姿で人間と交流できるイベント」。
そのため、漫画やアニメなどの二次創作コスプレはNG。よみせ通りにまつわる姿になってもらいます。

このテーマから解るように、「妖店通り商店街」は、若者のみをターゲットとした従来のパーティー感の強い仮装イベントではなく、参加者たちが、かつてより夜に賑わいを見せたよみせ通りの歴史と風土をそれぞれに学びながら楽しみ、自由な発想を落とし込むことで地域の特性をより色濃く反映した、一風変わったお祭りとなっています。仮装をする人も、しない人も、老若男女がそれぞれに楽しめるイベントです。
よみせ通りへは、千代田線の「千駄木」駅から徒歩2分。
そのほか、台東区循環バス「めぐりん」の12番バス停で下車すれば、すぐ目の前です。
日ごろ人間に紛れて過ごしている妖怪たちも、この日ばかりは本来の姿で商店街への来場者を迎えます。
まさか、これほどまでに沢山の妖怪が暮らしていたとは…人間にも妖怪にも親しまれる街、それがよみせ通りです。
人間たちも、大道芸や、妖怪にまつわる露天を並べ、妖怪を歓迎していました。
今年の東京では猛暑が続いていますが、夕方ごろからは観光客で溢れ、すれ違うのも困難なほど。思い思いに友好を築いていました。

妖怪たちの代表(妖店百貨展主宰)にお話を聞くと、「妖店通り商店街」は、隣接した谷中銀座にたくさんの人が訪れている反面、T字で繋がっているよみせ通りにはなかなか人が来ないというのが2012年ごろの状況で、いくつかの老舗店舗さんは閉業を決めており、このままでは商店街がなくなってしまうのでは…と言うところから、若手たちで集まり構想を始めたとのこと。

谷中霊園や全生庵、河童の伝説がある須藤公園、狐坂ムジナ坂の存在や法螺貝の伝説など、妖怪話には事欠かないこの地に相応しいイベントとして立ち上げられました。

決して「町おこし」などと言った大層なものではなく、もともとたくさんの人が住んでいる谷根千の方々に、
「よみせ通り」が元々もっている魅力に改めて気づいてもらう機会を作っただけ、と妖怪たちの代表は言います。

年々増す暑さにより次回の開催は未定とのことですが、文京区本郷の鳳明館森川別館にて「妖怪の宿鳳明館」と言う妖怪文化体験イベントを毎月第一日曜日に定期開催中していくとのことです。
怪たちにも愛される、よみせ通りの魅力についてもう少し探っていきましょう。

よみせ通りの中腹には、この商店街を見守るように「延命地蔵尊」が鎮座しています。
不思議なお力を持って事故や病気から人々を救って下さるお地蔵様で、遠近よりお徳を偲んで大勢の参拝客が日々、ここに集まってきます。
すぐそばには「水洗地蔵尊」のお地蔵様も奉られています。お水をかけて洗い清めることで、全ての穢れを払ってくださる効果があり、病気やあらゆる苦痛を流して下さるお地蔵様です。

地域の人々に大変大事にされており、道すがらお祈りをして行く人や、一礼をして行く人が絶えません。
こちらは商店街の老舗「キッチン マロ」さん。
お話好きのオーナーが暖かく迎えて、訪れる人々に元気をくれます。オススメはロースカツ定食やハンバーグ定食。
日本伝統飴細工の専門店、「あめ細工 吉原」さん。
色とりどりの精巧な飴細工が、道行く人を魅了していました。
こちらは谷中のおやつ屋「がようし」さん。イートインも可能なケーキ屋さんです。
モダンでお洒落な概観でありながら、どこかノスタルジックな懐かしさも感じさせる、絶妙な空間です。
とってもキュートで繊細なデザインのケーキの原材料は、すべて北海道産。有機鶏卵を使い、素材にも拘り抜いた一品となっています。
ケーキの名前はすべて平仮名で書かれており、これは「子供さんが読みやすいように」そして「ご年配の方には、英語のメニューはカタカナよりも、ひらがなの方が読みやすいようなので」と言う理由から。

「紅茶とケーキを通してココロの豊かさをお届けし、子供たちを笑顔にする」がオーナー・野田さんのモットー。
「がようし」さんには様々な所にオーナーの気遣いが溢れており、お店の入り口も、ベビーカーを押したお母さんが入りやすいようスロープになっています。小さなお子さんからご年配の方まで、世代を問わず居心地良く感じられるお店です。
「がようし」のオススメは、なんと言っても「やなかしゅー」。
アーモンドとパウダーシュガーでおめかしした、サクサクと軽い口当たりのシューの中には、甘すぎずも濃厚なカスタードと生クリームがたっぷり。

なんと、隠し味は○○…!?

どこか懐かしい味がする、この絶妙にブレンドされた隠し味のヒミツは、お店でコッソリ教えてもらえるそうです。
ショートケーキは定番と季節限定の2種類。
今月のハーブティーはホワイトクリアで、紫外線を浴びたお肌に優しい成分が含まれています。
お茶が入るまでの待ち時間も楽しめるよう、かわいい砂時計が優雅な時間の流れを演出してくれます。
その名の通り、「がようし」さんには、たくさんの色鉛筆と紙が置かれており、自由にイラストを描くことができます。

訪れたお客さんが思い思いに描いたイラストは、店内に大切に掲示されます。英語や韓国語が書かれたイラストもあり、様々な国からお客さんが訪れているのが解ります。
飾り終わったイラストはすべてファイルに閉じて大切に閉まってあり、いつでもまたお店に見に来ることができます。描いたイラストは、お家に持って帰っても良いそうです。
お子さんや、600円以上のお買い物をされたお客さんは、壁面に設置されたオーナー手作りの大きな「からくり」にチャレンジ。

木製の玉を筒にセットしてボタンを押すと、店内の壁に仕掛けられたからくりの中を小気味良い音で玉が転がっていきます。ドキドキするからくり越え、見事、中央のコーナーに玉が落ちると「ここだっく」と言う焼き菓子をお土産にもらえます。いらしていた海外観光客のお客様も「からくり」に興味深々でした。

たくさんの暖かい気持ちをもらえる「がようし」さん、実はアナグラムで、文字を入れ替えると「ようがし(洋菓子)」!

お店の名前にまで、からくりが隠されていたとは…。

木のぬくもりと紅茶の温かさの中で、モダンな雰囲気とゆっくりした時間の流れを楽しみつつも、遠い昔の子供の頃に立ち返ったような気持ちにもさせてくれる、よみせ通りの名店です。

野田さん曰く、よみせ通りの良いところは「みんな親切で、誰とも気軽に話せて、助け合える商店街であること」だそう。
よみせ通りを歩いていると、海外の観光客が非常に多いことに気が付きます。街中にはツーリストインフォメーションも設置されており、日本文化の体験教室なども開催されています。

一度は存続が危ぶまれたよみせ通り商店街は、地域の人々だけではなく、国境を越えた様々な人々を魅了して、一層の輝きを増しています。

妖怪や伝統工芸など、古き良き日本の姿。
商店街文化が全盛期であった、昭和の時代を感じさせる地域密着型のお店たち。
そして、新しい文化を感じさせる流行のカフェやショップ。

古きと良き、伝統と流行、そして妖怪と人間が今も仲良く共存している「よみせ通り」。

この素晴らしい街に是非、足を運んでみてはいかがでしょうか。